音響処理は、やり始めると終わりがありません。でも、何もしないよりは少しやった方が確実に良くなります。この記事では、小さな部屋で音響処理を始めるときに、何を最初にやるべきかを書きます。
吸音と拡散は別物 ¶
吸音材(グラスウール、ロックウールなど)は音のエネルギーを熱に変えて消します。拡散材(QRDディフューザーなど)は音を様々な方向に散らして、特定の反射を減らします。部屋を吸音材だけで埋めると、デッドすぎて不自然な音になります。吸音と拡散のバランスが大切です。
最初にやるべきこと:初期反射の処理 ¶
スピーカーから出た音が壁に当たって跳ね返り、耳に届くまでの時間が短い反射を「初期反射」といいます。これがモニタリングの精度を下げる最大の原因です。スピーカーの左右の壁(第一反射点)と天井に吸音パネルを貼るだけで、モニタリングの精度が大きく改善します。
低域の処理が一番難しい ¶
低域(100Hz以下)は波長が長いので、薄い吸音材では吸収できません。コーナーに厚さ200mm以上のグラスウールを置くか、バストラップ(低域専用の吸音材)を使います。当スタジオでは2022年の改修で後壁に厚さ100mmのパネルを追加しましたが、それでも完全ではありません。低域の処理は、小さな部屋では特に難しい問題です。
予算別の優先順位 ¶
予算が少ない場合は、まず第一反射点の処理から始めてください。市販の吸音パネル(¥3,000〜¥8,000/枚)を4〜6枚使うだけで、体感できる変化があります。次にコーナーのバストラップ。最後に拡散材。この順番で進めると、費用対効果が高いです。
測定ツールを使う ¶
音響処理の効果を確認するには、測定が必要です。無料のソフトウェア(Room EQ Wizard)とマイク(UMIK-1など、¥15,000前後)があれば、周波数特性と残響時間を測定できます。感覚だけで進めると、処理しすぎたり、問題のある周波数を見逃したりします。当スタジオでも、施工のたびに測定して確認しています。
音響処理は一度やれば終わりではありません。部屋の使い方が変わるたびに、少しずつ調整していくものです。